2011年04月20日

第1回 ディティールにこだわるな

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 バリ人は生まれつきの彫刻家でありダンサーである。“アイ・ラブ・バリ”の目線で眺めると、それぐらいの賞賛は贈りたいところだ。じっさい、ナイフ一丁あれば何でも作ってみせるグッドな手先は、日本に来ればたちまち子どもたちのヒーローだろう。いや、大人たちにだって、眠りについていた「少年」の心を覚ましてくれるに違いない。村々を歩くと、あっちこっちで「ウンコ」座りしながらガラスの破片や金属片で木に模様を描いたり、ペーパーをかけたり、バーナーで焼き付ける光景など、木や石や竹や鉄と“格闘”する少年少女をたくさん見かける。テガラランという村に行くと、一家一族総出演の家内手工業的木彫り屋さんがウンザリするほど軒を並べている。父ちゃんが木を運び、息子がそれを切る。一家のナンバーワン“アーティスト”の指導を受けながら木彫りに向かい、子どもたちが色を塗る。それも楽しそうにおしゃべりしながら…と、大体こんな風にモノづくりが進む。でも、得手不得手、スペシャルな得意技があって、馴染みの店に何度も訪れるようになると、ココはネコの小さいのがいい、あの兄ちゃんは大きい花が上手い、この一家は何といってもカエルのデカいヤツが抜群、といった風に、ま、それぞれに腕の見せ処を心得ているのが分かる。どこかの店の何かがヒットすると、アッという間に、オオッ!というほどコピーが出回るのもバリらしい。しかし不思議なのは、ロングセラーがなかなかない。確かにヒットしているのに一つもなくなったら、もう何を作っていたのか、サンプルさえ消失してしまってもう作らなくなってしまうのだ。そんな例を数多く見た。そこがまた、目論見や魂胆のエネルギーに乏しいバリらしくて“アイ・ラブ・バリ”たる所以かもしれない。ネコやカエルの置物など細工しやすい軟らかい木は「アベーシア」、皿や鉢など木目の美しさを出すには「ソノー」の木がいいという。テーブルやイス、ちょっと高級感のあるタイコには「マホガニー」をよく使う。木のダイヤモンドといわれる「ジャッティ」は、一般にはチークの名前で知られ、近年はオイルの高騰に伴って随分と高くなった。アンティークの家具にはほとんどこの木が使われている。箸やスプーン、取り皿など最もポピュラーなのが「ココナッツ」の木だろう。ココナッツのほか「ナンカ」や「ドリアン」などフルーツの木も独特の味わいが出るため、値の張る彫刻類でみかける。イルカの置物や子ども用の椅子に、最近「スワール」の木が用いられるようになった。アベーシアよりは固く、やや高級感が出せるのが魅力だ。そんな“メイド・イン・バリ”を楽しむコツは、何といってもディティールに目を向けず、キラキラ(インドネシア語で曖昧な)した作風に流れるゆるりとした空気を受け入れることだと思う。“アイ・ラブ・バリ”への一歩でもある。やがて、そこから“アイ・ラブ・ミー”へと続く道も繋がっているように、ボクは思うのだ。
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2011年04月12日

バリ日記

バリ日記



NO.1 ノタボレ キラキラ
 このテンドネシアの言葉、何だかロマンチックな響きがする。でも、決してのたうちまわるほどベタボレの、星でも降ってきそうな気分、なんて愛の坂道を一気にかけ上る心持ちを表現した言い回しではない。ボクがバリ島に行き始めた頃、よく口にした言葉だ。「お〜い、そこのカワいいコ、ちょっと遊ぼ」。ま、そんな軽い口説き文句かな…。バッテン!バッテン!バッテン!どこかのクイズ番組のごとく、ボクをよく知るドップリ宮崎弁のオバさんたちは自信をもってNOと回答するに違いない。女を口説こうなんて…と、鼻からシャボン玉でも飛ばしながら笑うだろう。だいたいボクがバリ島に仕入れに行くといっても、ボンの道楽ぐらいにしか思っていない毒身、いや独身女性および非独身女性は、ちょっと数えただけでもウチのノラちゃん(カワいい我が家の猫ちゃん)の、指までお借りしたいくらい思い浮かぶ。あぁ〜ぁ、ボクだってギンギンの男だぜ〜ぃ、なのに…。
 さてさて、心にカツドン、いやド〜ンとカツ!を入れて本題に戻すと、話は愛の行方とは何の関係もなく,Notaは伝票とか書類など、bolehは〜してもよい、kira kiraはおよそとか適当にといった意味だ。だから「ノタボレ キラキラ」は、伝票は適当につけといてよ、という意味になる。衝動買いの名手なら分かって頂けようが、“まだまだ”と思って“ついつい”を過ぎると、最後は宮崎人がよくいう「どんげしよ」ってことになる。もう船か飛行機で送るしか手はない。この時、けっこう厄介なのが、買ったものをいちいち素材から用途、値段、数などを伝票におこさなければならないこと。商売用だと、コレがちゃんとしていないと日本の税関からお叱りを頂戴しかねない。ボクは荷物屋の超メタボリックなマデさんに、買い物が免税の範囲(20万円以内)なら「ノタボレ キラキラ」をお願いしていたのだ。するとマデさんは、やけに白い歯を見せながら、明るいスケベェな瞳で「ケンジ〜、ダイジョウブヨ!」と、親指を立てて何度もうなづく。ボクはそんなマデさんの顔を見ると、なんだかいつもホッとしてしまった。



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NO.2 上を向いて歩こう
 空からストリップ劇場の看板が降ってきて救急車で運ばれたことはあるけど、星降る夜に花火が降ってきて頭が燃えたことはあるけど、いまだに天からおカネもボタモチも降って来ず、空とボクの歴史にはあまりいい思い出はない。でも、ボクは宮崎に来てから空を見上げることが多くなった。バリにいってもそう。だって空が広いんだもん。陽だまりの能天気な青空にチュッ!としたい気分。雪国で育ったボクは、少年時代の長きに渡って、陽だまらないNO天気な寒空にべぇ〜!とした心持ちだった。そのせいか、今でも生まれ故郷に行くと、ついついうつむき加減になってしまう。東京では、目線を落としがちな人にたくさん出会った。ボクは勝手に「故郷はきっとボクんちのそばだな…」と想像した。みんな、寂しそうに見える。少なくとも楽しそうには見えない。その点、“椰子の木より高い建物はダメ”と決められているバリはエラい。経済活動の規模からいって必然的に低い建物が多い宮崎にも大空が広がる。空が広いと人は上を向く。上を向いてばかりいると気分もなんとなく沈まないから不思議だ。コンサートに行って、だんだんテンションが高くなって心が踊り出すと、人はいつのまにか15度くらい顔が上がっている。気持ちいいと自然と目線が上向きになるのだろう。ひょっとしたら、幸せのカタチは上を向いて暮らすことなのかもしれない。でも、首がイタくなるなぁ。おカネが落ちてても分かりゃしない。どうしよ……。


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NO.3 キラキラ人とてげてげ人
 キラキラ。これほどバリ人を物語っている言葉はないと思う。どこに住んでるの?年齢は?仕事は何?コレいくら?コレ何でできているの?どこ行くの?恋人は何人?…ひょっとすると、返ってくる答えはみ〜んなキラキラじゃないだろうか。数々の工芸品やら芸術品なども、ほとんどが厳密とか緻密とか精緻とは無縁のシロモノだ。人気のケチャダンスでは大勢の出演者に紛れるようにアクビする者、テンポがずれる者など、ここにもキラキラは健在。クルマでトラブルを起こしたら「1万円もらえれば保険がでるから…」とホントかウソかレンタカー屋はいつもそういう。信号機はついたりつかなかったり…。一旦停止のルールはなく、エイ、ヤーで曲がるしかない。このスリリング気分はそれなりにやみつきになってしまう。顔をみてから値段を決めようとする店も多い。顔が小さく美人だと安いのだ!もちろん、そんなバカなことは断じてないけど、日本人が一番オタカ〜イ。買い付けでオーダーしても約束の日までに出来上がることはまれ。みんな口々に「祭りだったから…」と言い訳する。それなら最初からいえばいいのに…とボクは思う。道端の犬もなんとも、のどか。クルマが近づいても避けようとしない。ブツけられても仕方ないか、運が悪かったのさ、といわんばかり…。ま、万事がこんな調子。空気がキラキラ。時間がキラキラ、人がキラキラ、キラキラ輝くキラキラ尽しの島なのである。男3人よればタバコを吸いながら話は尽きない。機械を使えば早く済むものをほとんどが手仕事。道路の白線引きはハケでコツコツ、鉄筋の建物を壊すのは大きなハンマーでゴンゴン、石や土運びは頭に乗せた籠に小さなスコップで山盛りにしてからひょいひょいと…。そんな姿をアチコチで見かけると、まだまだ人間は大丈夫ですよ、と思ってしまう。むかし習った急がば回れ!遠回りして帰ろうよ!ボクたちだってホントは、早くやらなくちゃならないことは、そんなにはないんじゃないだろうか…と。都会を発作的にオサラバしてきたボクにとって、ここ宮崎に流れるキラキラさながらの時間は本当に心地よかった。ゆるゆるした空気は約束ごとの境界を曖昧にし、深刻さのベクトルは海や空の青さにさえ負けてしまう。おまけに「何があっても、ようこそ」「許してあげるから、おいでよ」みたいな宮崎人の“温暖な”てげてげ気質は(なかには違う人もいるけど…)、コワれかかったボクを十分ヨシヨシしてくれた。ほどよいいい加減さが満ち満ちている世界を、もっと大事にしていかなくちゃ、ね。
posted by 金土日店主 at 17:34| Comment(0) | バリ日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

金土日Story

金土日Story

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第1話 思いつきは風呂の中から
 ボクは風呂に入っていた。ぽとっ。ぽとっ。ぽとっ。湯煙のしずくが脳天にささやく。「そろそろ何かやっど…、40やっちゃろ」。宮崎弁でいうならこんなところか?確かにそれまでの“どっぷりパチンコ依存生活”に飽きが来てたし、時々しかないライターの仕事も不安定で、もうひとつ、大いなるボクの人生に柱が欲しいと思っていた。ふと金、土、日という言葉が浮かび、心の視界を開いた。そうだ、何も毎日同じ仕事をすることはない。どんな好きなことも毎日やると必ずイヤになる。かつて働き過ぎて「人間嫌い」に陥ったボクではないか。金、土、日のみオープンする店をやろう…。住まいの1階は20畳以上はある。天井も3メートル近くあり、明日にでも営業が可能だ。陶器や木工など友達に工芸家もいる。置かせてもらえないか頼んでみよう。そしてバリに仕入れに行こう。バリだ、バリに行ける。ボクは風呂にもぐり、バリ、バリ、バリと3回叫んでみた。ブクブクブクと泡が3発出たけど、泡とは消えず、すぐにも実現しそうな気がした。3カ月前に行ったバリが忘れられず、「アイ・ラブ・バリ」を実行する機会を狙っていただけに、この思い付きには、ちょっとぐらい空でも飛べそうなほど有頂天になった。店名は「金土日(キンドビ)」。響きもいい。文字通り週末店だ。パチンコと原稿とバリ…。これで、いっちゃがー。コトを企てる助走期間はわずかに湯舟の30分、いつもより15分も長湯してしまった。平成7年が明けたばかりのことである。


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第2話 初めての仕入れ
 平成7年が明けた。3月頃だったかな、よし、店をやるゾ、面白いもの探してこなくっちゃ、とボクはバリへの出発の前日、コーフンしてなかなか眠れず、しょうがないから泉谷しげるの「春夏秋冬」を胸の奥で何度も口ずさみながら目を閉じた。「…・今日ですべてが報われる。今日ですべてが始まるさ〜」。本当に始まるのだろうか?ま、失敗してもいいや、また、始めればいいさ…。初めての仕入れ。宮崎で雑貨屋を営む夫婦もいっしょだ。いろいろ教わりながら、3人でアレがいい、コレはダメ、でもソレも難しい、と悪戦苦闘、支離滅裂、意気消沈を繰り返しながら、少しずつ“仕入れ街道”を前進した。そんなとき、ウブドゥで見かけたワニさんベンチにすっかり魅せられた。全長160センチくらい、体重20キロ以上、表情マヌケ、でも抱き締めたくなる愛らしさ。確か店先に3匹いた。溶け残る雲さえない空の青と森の緑を背景に、そのおしゃまなワニさんたちは何とも涼しげに空を見ておった。なかでも一番小柄でしっぽに裸の女性が彫られているワニさんが忘れられなくて、恋しくて、逢いたくて…4回も足を運んだ。「いっしょに連れてって…」。そばに寄るとせがまれて、ボクは決心した。ウーン、重かったなぁ〜。かかえて運んだら、やっぱり税関から「別室でレントゲンを」と、カワいそうにカラダの内部をすっかり見られてしまった。このコは今どうしているかというと、へへっ、今もゲンキ!金土日のディスプレイコーナーで、変わらず愛嬌を振り撒いている。




第3話 荷物が来ない!
 インテリアを芸術したい。
 食卓を優雅したい。
 生活を元気したい。
 自分をあっ晴れしたい。
 きららなライフデザインを応援する
 とってもたわわな店が6月16日(金)綾町に誕生。
 4月には到着するはずのバリからの荷物が6月に入っても来ない。金土日オープンの案内コピーは、最初5月18日開店予定だった。妻の誕生日と結婚記念日だから、ゼッタイ忘れないだろうと。どげんしたとや…と思わず宮崎弁になるくらい、荷の行方が不安になった。誤送?それとも船が沈没?海賊さん?用意できた回答はせいぜいがこの程度で、不安の糸をほぐすに至らない。「どうしよう」の種子は芽を出しどんどん大きくなり、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう…。頭の回りをこだまする。ボクはこれ以上自分のローバイを発掘するのは止めて、郵便局に電話した。「…あぁ、それなら神戸の震災で荷がちょっと遅れてますね」。なーんだ。でも、すぐさま「レンラク、クレヨ」と、ローバイはバイバイしたけど、イカリでカリカリきた。




第4話 梱包と発送の苦しみ
 体重計、カッターナイフ、ガムテープ、ダンボール、ゴミ袋、新聞紙、マジックインキ。荷物を送る7つ道具だ。なんてことはない、日本ならすぐに揃う。でも、バリだと簡単にはいかない。近所のフランジパニーの木で鳴く鳥の声が「トホホ」「トホホ」と聞こえた。「ダンボールはどこ?」とボクらを世話してくれるグッデーさんに聞くと「どんなボール?」と予想を裏切らないお答え。「ゴミィをポイするフクロは?」とジェスチャーしながら尋ねたときは、グッデーさんの人生を暗くしただけだった。異国の地では小さな積み重ねが明日を開く、と自分に言い聞かせ、あきらめずグッデーさんとオハナシした。やっとダンボールは単にボックスといい、ゴミ袋はプラスティックということが判明した。国際交流が実を結んだ瞬間である。本当は荷物はカーゴに預ければ、店まで取りに行ってくれるし、梱包はもちろん伝票も作ってくれるので、思ったほどシンドくはない。当時は何も知らなかった。カーゴに行って身振り手振りで交渉したけど、落ちた汗の一滴にアリが溺れるごとく、もがき苦しみヘトヘトに疲れた。宮崎まで送る方法が見つからず、結局、郵便屋さんにお世話になることにした。でもやっぱりタイヘン。全部自分で梱包しなければならない。しかも箱の3辺の合計が3メートル以内の20キロ未満。おまけに“ボックス”探しに、バリの都会(?)デンパサールの夕方の市場をさまよったのである。




第5話 オープンのトキメキ?
 ドキドキドキドキドキドキドキドキ…。6月16日、金曜日を迎えた。バリのTシャツにバティックの茶色いパンツ、バリの兄ちゃん風の格好で客を待った。店員さんをやった経験がないので、オープンの時間が近づくと、上手く呼吸ができなくなった。心臓の高鳴りだけがボクを支配する。過呼吸で景色が少し歪んで見える。「どんげしよ」。考えてみるとボクの人生にはいつも「どんげしよ」がついて回る。やたらと緊張し、手と足と頭がバラバラに動いてる感じがした。これじゃ、映画で観た出来の悪い“お手伝いさんロボット”みたいだと思った。フタを開けてみると、現在の10分の一も仕入れなかった初めてのバリ・グッズだけど、一つひとつの商品をどうしたらそんなに口がホメるのかと思うほどゼッコウチョーにPRした。なーんだ。できるじゃん、ボクにだってお店ぐらい…。『宮崎日日新聞』も取材に来てくれ、「自宅が金、土、日だけお店になる週末店」と紹介された。ヘヘヘ。いいじゃん。たくさん売って、またバリに行こ!この時の商品のうち今でも残っているのは、緑色の超大皿とワニさんベンチ、どっちも苦労して手で持ってきたのになぁ。一体数万円もしたお気に入りの人形2体は、お金持ちそうな品のいい夫婦が買っていかれた。もう少し置いときたかったんだけど…。以来、その人形は探すけど見つからない。手足が動く木製で、衣装も細かくすごく凝っていた。もう一度会いたいな。
posted by 金土日店主 at 17:25| Comment(0) | 金土日Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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